訪問看護ステーションの閉鎖(廃止)は、単に営業を止めるだけでなく、「利用者の引き継ぎ」と「行政への多岐にわたる届出」が極めて重要です。重要なのに休止・廃止に関する記事が少ないんですよね。訪問看護ステーションの撤退を考えた時にM&Aも視野に入れるべきです。
看護師が起業したケースでの訪問看護ステーションの休廃止が増加していく中、一度は考えてしまうことなんじゃないかと思い記事にまとめてみました。
Contents
休止と廃止の違い
まずは休止と廃止についての比較表を見てみましょう!
| 区分 | 休止 | 廃止 |
|---|---|---|
| 事業所番号 | 維持される | 消滅 |
| 再開 | 上限半年までで届出のみで再開可 | 新規指定が必要 |
| 目的 | 一時的な人員不足・経営調整 | 事業終了 |
| 利用者 | 他事業所へ引継ぎ必須 | 同左 |

M&Aについて考える
売り手として 「法人ごと(株式譲渡)で売る」か、「事業のみ(事業譲渡)で売る」か は、
訪問看護ステーションの場合 税金・引継ぎの手間・リスク分担・売却価格 に大きく差が出ます。
法人ごと(株式譲渡)で売る
売り手のメリット
- 税率が有利
→ 売却益は約20%(復興税含む)。
→ 個人事業主ではないため、法人の株を売る形は売り手の手取りが多い。 - 契約関係がそのまま残るため楽
→ 利用者・ケアマネ・病院との契約を再度結び直す必要なし
→ 職員の雇用契約のやり直しも不要
→ 介護保険・医療保険の指定はそのまま継続
→ 加算算定実績も引き継がれるため買い手の評価が高い - スピードが早い(1〜2か月で終わることも可能)
売り手のデメリット
- 法人が過去に抱える負債・税務リスク・行政指導の可能性も“丸ごと”買い手に引き継がれる
→ その分、買い手はデューデリを厳しくする
→ 何か問題があると評価額が下がるか、取引が止まる - 借入金をどう扱うかの整理が必要(基本:借入は法人に残り、買い手が引き継ぐ or 売却時に返済してゼロにする)
デューデリ(デューデリジェンス)とは、M&A(企業買収)や投資の際、対象となる企業や事業の価値とリスクを詳細に調査・分析すること
「事業のみ売る(事業譲渡)」の特徴
訪問看護ステーションの指定期間の残年数が長い方が価値があり、看護管理者付きでの事業譲渡が望まれるケースが多い。
売り手のメリット
法人にある不要な資産・負債・トラブルを切り離せる
→ 過去のリスクを買い手に渡さなくて良い
→ 借入金がある場合は、売却後も法人側で精算可能(柔軟)
売り手のデメリット
- 税負担が高くなりやすい(場合によっては約50%課税)
例:事業売却で得た利益 → 法人税 → 残った利益を分配すると所得税
→ “二重課税”になり、手取りが減る - 契約関係がすべてやり直しで手間が膨大
- 利用者契約書の再締結
- 職員の転籍手続き
- ケアマネ・病院への説明と契約切替
- 保険者(介護/医療)への指定取り直し手続き
- 加算の算定要件がゼロリセットになる(大きなデメリット)
- 買い手が望まない
訪看は「指定」が資産価値なので、事業譲渡は敬遠されがち。
| 判断ポイント | 株式譲渡(法人ごと) | 事業譲渡(事業のみ) |
|---|---|---|
| 売り手の手取り | ◎ 多い | ✕ 少ない(課税重い) |
| 手続き | ◎ 楽 | ✕ 超大変 |
| 買い手の好み | ◎ 人気 | △ 敬遠される |
| 借入金 | 残して売れる or 完済して売る | 法人側に残せる |
| 過去のトラブル・リスク | △ そのまま渡る | ◎ 切り離せる |
| 加算実績の引継ぎ | ◎ 継続 | ✕ ゼロリセット |
訪問看護ステーション閉鎖の検討と事前相談
閉鎖を検討した段階で、まずは所轄の行政機関に相談します。
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相談先: 都道府県(または市町村)の介護保険担当課、および地方厚生局。
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タイミング: 廃止予定日の数ヶ月前が望ましいです。特に補助金を受けている場合は返還等の協議が必要になることがあります。
ステーション閉鎖に向けたスケジュール(時系列)
【3ヶ月〜2ヶ月前】
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従業員への説明: 解雇や転籍が伴うため、労働基準法に基づき適切な時期(原則30日前まで、実務上はそれ以前)に伝えます。
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関係機関への報告: 連携している居宅介護支援事業所(ケアマネジャー)や主治医に対し、閉鎖の旨を伝えます。
【1ヶ月前まで】
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利用者・家族への通知: 利用者の不安を最小限にするため、対面で丁寧に説明し、同意を得ます。
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利用者の引き継ぎ: ケアマネジャーと連携し、他の訪問看護ステーションへの紹介・調整を完了させます。「誰もサービスを受けられない状態」にすることは厳禁です。
引き継ぎ先が決定したら、一覧表にして介護保険事業者指導センターへ提出。引き継ぎ先の変更がないかなど、定期的に報告が必要になります。
【廃止日の1ヶ月前(期限)】
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介護保険法に基づく廃止届: 指定権者(都道府県等)へ「廃止届」を提出します。
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名古屋市等の自治体では、新たな事業所への引き継ぎ状況の確認が必須となります。
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【廃止後10日以内】
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健康保険法に基づく届出: 地方厚生局へ「指定訪問看護事業廃止届出書」を提出します。

留意事項・トラブル防止
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記録の保管: 訪問看護記録等の書類は、法令により完結の日から5年間(自治体により異なる場合あり)の保存義務があります。閉鎖後の保管場所を明確にしておく必要があります。
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未収金の回収: 閉鎖後は請求業務が困難になるため、早めに管理を進めます。
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M&Aの検討: 赤字や後継者不在による閉鎖の場合、他社へ事業を譲渡(M&A)することで、利用者の継続性を守り、従業員の雇用を維持できるケースもあります。
自治体によって独自の様式や期限が設定されている場合があるため、必ず所在地の「介護保険担当課」のホームページを確認するか、直接窓口でマニュアルを入手してください。
社会保険診療報酬支払基金へ送付先変更依頼書・廃止後の再審査等調整額に係る申請書の提出が必要になります。書類には今後の連絡先や調整方法(現金振込か継承先医療機関の診療報酬等からの相殺)についてなども報告します。

まとめ
訪問看護ステーションの休止・廃止・M&Aについての記事をまとめてきました。経営者としていつかはEXIT(撤退)する時期は必ずきます。経営がうまく行っている時も出口戦略は見ておくのが、賢い経営者だと思っています。
この記事が訪問看護経営者のお役に立ちますように!
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